それでも生きていく
92歳のおじいさんと話をする機会に恵まれた。
おじいさんといっても、身なりはしっかりしていてとてもダンディだ。
チノパンに、ギンガムチェックのシャツを着ている。
どうやら、一人暮らしの様だ。奥さんに先立たれ、一人息子さんは東京にいるという。
ルーティンがあるようで、火曜日のランチは地元のカフェへ、金曜日のディナーは近くの定食屋さんに行くという。
しかも、誰かに連れて行ってもらうのではなく、自分の足で。
年齢に甘えるのではなく、きちんと生きている姿になんだか感動した。
私は、この人なら話してみようと思い、娘の事を話した。
じっと、聞いていてくれたが、亡くなったことを話したら、顔を上げぴくっとした。
そして、こうおっしゃった。
「それでも生きていかなければならない。」と。
92年の人生の中には、色んな人との別れがあっただろう。
とても、説得力のある言葉だと思った。
「それでも生きていく」
還暦を過ぎた自分は、もう、十分生きたし、娘の元へといつ行ってもいいと思っていた。
時には投げやりになり、自分の命を粗末にするようなことも考えた。
でも、90歳を過ぎて、きちんと生きている人を目の前にしたら、なんだか、自分が恥ずかしくなった。
命ある限り、きちんと生き、何があっても生きていく。
大切なことを教わった。
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