記念写真
台風一過の晴天。 部屋の中を見回すと、ガラクタの多いこと。 少し、片付けて断捨離しなくては。 ふと、手に取った写真。そこには、娘の成人式の着物姿があった。 親子三人で、写真館で撮ったものだ。 白地に薄ピンクと、紫色の花を散りばめた清楚なデザインの着物。 母と娘と私、親子三代で選んだものだ。 一瞬一... 続きをみる
助手席
今でも、運転中にふと助手席に目をやる。 一緒に乗っているような気がする。 病院まで、1時間のドライブをした道。 桜の花が綺麗だったな。山の緑が眩しかったな。 周りの景色はまだ、何も変わっていない。 その道を通る度に、当時の記憶が蘇る。 もう2度と一緒にドライブすることもないんだな。もう2度と… い... 続きをみる
友だち
60年近く生きていると、その時その時で、友だちができる。 学生時代の同じ釜の飯を食べた友、就職して出来た友、ママになって出来た友。 年賀状くらいの連絡しか取らない人もいる。 私は娘を亡くすという、最大の哀しみを経験した。 私の周りには、子供を亡くした人はそういない。探して、二人くらいだ。 友だちっ... 続きをみる
化粧
娘は、化粧が好きだった。 めんどくさい。と言いながら、毎日綺麗にしていた。 亡くなる2週間くらい前の事だ。 私が、病室で薄化粧をしているときに、パッと目を覚まし、「ずるい。私もする。」 と言って、化粧を始めた。 意識が朦朧としていたので、何度も何度も眉ペンを落としていた。 ファンデーションを塗って... 続きをみる
心の穴
今日も一日が終わろうとしている。 娘と会えなくなって2年5ヶ月が過ぎる。 亡くなってすぐに、発表会があり、その後も、自分を鼓舞するように頑張って来て 8月には、追悼発表会もやり切った。 そして、今。 少しホッとしたと言うか、ゆっくり足元を見る時間が出来た。 娘のいない現実を目の当たりにする。 心に... 続きをみる
ピアス
お洒落にも、こだわりがあった娘。 アクセサリーは、イエローゴールド。ファションは、カッコイイ系。 好きな色は、紫。 まつ毛、ネイルも欠かさずやっていた。 中でも、ピアスは毎日していた。たくさんあったが、随分、友達に配った。 私が、身に付けているものは、毎日していたイエローゴールドのネックレス。 誕... 続きをみる
愛犬2
今日は、仕事もなく、家人もいない。雨も降っている。 午前中は、一人でいるせいか哀しみに浸ってしまう。 そんな時、娘の愛して止まなかった愛犬と話す。 私の膝の上に座り、顔を見つめ合いながら、愛した娘と愛したご主人について… もちろん、犬は話さないが目で多くを語る。 そして、最後に「お互いに頑張ろうね... 続きをみる
通夜
先日、伯母の通夜に参列した。 91歳、老衰による大往生だ。 娘が亡くなり、私の死生感は大きく変わった。 人は、必ず死ぬ。当たり前のことだが、死を意識して生きるようになった。 以前は、死は遠い物で出来るだけ避けたいものであった。 通夜は、生前の姿とのお別れの儀式だ。翌日には、もう姿はない。 目の前の... 続きをみる
稽古場
小さいながらもバレエスタジオを切り盛りしている。 後を任せる人がいたから、何とか老体に鞭打ってきた。 2か所の内、1か所は中学生以上の生徒の教えは娘に任せていた。 しかし、今は私がやらざるを得ない。そんなことを言うとやりたくないように聞こえるがそうでもない。疲れている時は別だが、私は教えることは好... 続きをみる
たい焼き
秋のお祭りのシーズンだ。 私は、甘党で和菓子、洋菓子が大好きだ。 娘は、お祭りに行くと必ずたい焼きを買ってきてくれた。 浅間神社で買ってくるたい焼きは、あんこがはみ出るくらい入っていて美味しい。 最期に娘と一緒にお祭りに行った子と話した。 行列に並んで買ってきてくれたようだ。 そう言えば、病気が分... 続きをみる
生まれた日
今日は、友達の娘さんの赤ちゃんに面会してきた。 新米ママは娘より二つ年上だ。 赤ちゃんを見るのは久し振りだ。可愛かった。愛くるしかった。 そんな赤ちゃんを見ていたら、娘の誕生の日を思い出した。 梅雨の真っ最中で、どんよりした日だったなあ。 3人目の初めての女の子、人生で最も幸せな日だった。 あれか... 続きをみる
ごめんね。
2014年の4月頃から、鼠蹊部の腫れを気にしていた。 近くの病院にかかり、検査をした。 レントゲンやCT、MRI、血液、でも、異常はなかった。 ただ一つ、生検(細胞を取り検査する)だけは、やらなかった。 2015年1月、足が浮腫み始めたので浮腫外来にて、初めて生検し、がんであることが 判明した。 ... 続きをみる
死後の世界
今日は、夕方から2本クラスがある。 午前中に夕食の支度をして、午後からテレビ鑑賞だ。 選挙の話題で持ちきりだ。 そんな時、リビングにある娘の写真に向かって話しかける。 「貴女がいなくなってから、こんなこと、あんなことがあってね。今、どこで何してるの?」 生前、私の悩みにズバッと、答えを出してくれる... 続きをみる
生きている者
学生時代の先輩に言われた言葉 「生きている者を大切に」 彼女は、半年の間に、ご主人、弟さん、愛犬を相次いで亡くされた。 絶望の淵にいるときに支えてくれたのは、お子さんであり遺された家族だった。 この言葉を頂いたときは、娘を亡くして半年くらい経った頃だった。 その頃は、周りを見る余裕もない。どうして... 続きをみる