yukari616また、会える日まで

25歳で亡くなった娘と共に歩んだ道

魔法の粉

骨転移が分かり、入院から1ヶ月で他界してしまった。


医師から「助けられない。延命治療です。」と告げられても、家族は信じることが出来ず、治そうと思っていた。本人もきっと、そうだったに違いない。


あまりにも急激な病状悪化で、現実を見ることが出来ず、医師や看護師から薬で眠らせ静かに見送る提案をされても、まだ、亡くなることなど眼中になくひたすら治すのだ、と思っていた。


足の浮腫みがひどくなってきたころ、私は娘の浮腫んだ足をマッサージした。


バレリーナとして踊っていた頃の引き締まった足とは程遠いものだった。


娘の足をマッサージしながら、どれだけ代わってあげたいと思ったか…。


そして、いつも、言っていた。


「病気を治す魔法の粉を下さい。体中にふりかけて、もとの元気な身体に戻しますから。」


ブツブツ言いながら、マッサージをする私を見て、ニコニコ笑っていた。


入院中、殆ど泊まり込み一緒に過ごしていた。


25年間、親子として生活してきたけど、あの時ほどの濃密な時間はなかった。


今は、娘と話すことも触れることもできないけれど、一緒に過ごした濃密な時間が私を踏ん張らさせてくれている。宝物だ。


そして、今は娘に守られている。いつも一緒だ。