魔法の粉
骨転移が分かり、入院から1ヶ月で他界してしまった。
医師から「助けられない。延命治療です。」と告げられても、家族は信じることが出来ず、治そうと思っていた。本人もきっと、そうだったに違いない。
あまりにも急激な病状悪化で、現実を見ることが出来ず、医師や看護師から薬で眠らせ静かに見送る提案をされても、まだ、亡くなることなど眼中になくひたすら治すのだ、と思っていた。
足の浮腫みがひどくなってきたころ、私は娘の浮腫んだ足をマッサージした。
バレリーナとして踊っていた頃の引き締まった足とは程遠いものだった。
娘の足をマッサージしながら、どれだけ代わってあげたいと思ったか…。
そして、いつも、言っていた。
「病気を治す魔法の粉を下さい。体中にふりかけて、もとの元気な身体に戻しますから。」
ブツブツ言いながら、マッサージをする私を見て、ニコニコ笑っていた。
入院中、殆ど泊まり込み一緒に過ごしていた。
25年間、親子として生活してきたけど、あの時ほどの濃密な時間はなかった。
今は、娘と話すことも触れることもできないけれど、一緒に過ごした濃密な時間が私を踏ん張らさせてくれている。宝物だ。
そして、今は娘に守られている。いつも一緒だ。
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