化粧
娘は、化粧が好きだった。
めんどくさい。と言いながら、毎日綺麗にしていた。
亡くなる2週間くらい前の事だ。
私が、病室で薄化粧をしているときに、パッと目を覚まし、「ずるい。私もする。」
と言って、化粧を始めた。
意識が朦朧としていたので、何度も何度も眉ペンを落としていた。
ファンデーションを塗って、眉を書くだけしか出来なかったが、少し綺麗になった。
後になって、「私、どうして化粧してるの?」と言っていた。
そして、恥ずかしかったのか、笑っていた。
毎朝、化粧をするたびに、娘を思う。眉を書くのが上手だった娘にダメ出しされないよう
眉は、気合を入れて書く。
そして、思う。
どうして、私は生きてて、娘はいなくなっちゃったんだろう?
考えてもどうしようもないことを問う。鏡の自分に向かって。
元気にしていたら、あと、2万回は化粧出来たのにね。
それも、めんどくさいか。
生きてると、めんどくさいことばかりだよ。
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