yukari616また、会える日まで

25歳で亡くなった娘と共に歩んだ道

2015年5月22日

娘がなくなる前日のことだ。


私の記憶の中で、忘れることの出来ない日だ。


その日、娘は、入院1か月の中で、初めて弱音を吐いた。


「もう、いいかな?ここでの、生活は。家に帰って、部屋の片付けがしたかったよ。」


と、ポツンと言った。


その日は、天気がよく、春の風が気持ちのいい日だった。


貧血、発熱、血尿が続いている中、久しぶりに洗髪してもらい、その後、車いすに乗って
9階の病室から、少し離れた、景色のよく見える窓際に二人で行った。


行き交う車をしばらく見て、「久しぶりに車を見たよ。風がきもちいい。」と、穏やかな顔で言った。しばらく、沈黙が続き、「もういいよ。ありがとう。」と言って、病室に戻った。


ゆったり、流れた素敵な時間だった。


翌日に永遠の別れが迫っていることなど、微塵も思っていなかった…


「もういいよ。ありがとう。」そういうことだったんだ。


人は、死期が迫っていることを感じることが出来るのだろうか?


娘の前日に言った言葉。意味があったんだ。


窓際での、二人の時間。映画のワンシーンのように、私の脳裏から離れることはない。


そして、翌日、旅立っていった娘。


私は、この日のことを一生忘れない。